エッチング側板コンバージョンキットを組む

15.〜16.

15.塗装

塗装の準備として、分解した各パーツを洗浄します。

ボディーは側板が金属なので、まず酸洗いののち古歯ブラシにクレンザーを付けてこすり、表面に微細なキズを付けて塗料の食い付きを良くしました。
(ちなみに酸洗いには通常用いているサンポールを切らしていたので、金属ハンダ付け用のフラックスをぬるま湯で薄めて用いました。またクレンザーはクリームクレンザーを使うつもりがこちらも切れていたので、粉クレンザーを用いています。どちらも“代用品”ですので、出来ればしっかり入手して使った方が良いです。)
床板は同様に酸洗いののち台所用洗剤で脱脂します。
台車枠はクレンザーで研磨し、塗料の食い付き改善を狙ってみました。


洗浄して塗装準備を整えた各部品。
台車枠もクレンザーでこすってつや消しになっています。
洗浄後は水滴をティッシュで良く吸い取ってから充分乾燥させます。
乾燥後はボディー妻面や床板の金属パーツにプライマー(マッハのメタルシールプライマー)を筆塗りし、それが乾いたらボディーの屋根と妻板をマスキングします。

準備が出来たら塗装開始です。
塗装はセオリーどおり、晴れて風が無い日の日中に行いました。


両面テープで割り箸に付け、塗装準備が整ったボディー。
塗装用具はタミヤのスプレーワーク(初期製品)で、画像のように割り箸の先に両面テープで塗装物を固定したら、ブロワーブラシでよくホコリを払っておきます。

吹き付けはまずプライマー(マッハのメタルシールプライマー)から行います。
これを市販のラッカーシンナー(カンペハピオ社のラッカーうすめ液、ホームセンターで入手)で少し薄めて、ボディー側面と台車枠に吹き付けます。


プライマーを吹き付けたボディー。
ボディーは金属の側板の表と裏に吹き付け。


別角度から、拡大。
塗膜は以前より厚めにし、サビ防止を狙いました。
ただこれがあとで問題を引き起こすことに・・・


別塗りの貫通扉(上)と、台車枠(下)。
妻面に付く貫通扉と台車枠にも吹き付けました。
台車枠の方は吹き付け直後にドライヤーの熱風で“強制乾燥”させ、食い付き向上を狙っています。

2時間ほどしてプライマーが乾いた(と思った)ところで、ボディー側面をマスキング。


室内に白緑を吹いたところ。
そして、室内に白緑(クレオス【62】つや消しホワイト+GM【13】緑2号+クレオス【4】イエロー少々)を吹き付けました。


屋根塗装後。
続けて屋根に屋根色(GM【35】ダークグレー+クレオス【33】つや消しブラック+【42】マホガニー、【30】フラットベース)を吹き付けます。この際は後半にやや濃いめの塗料を遠くからまぶすように塗り、キャンバス屋根のざらざら感を表現しています。

それが乾燥したら、マスキングを剥がします。


屋根まで塗って、マスキングを剥がしたところ。(上はついでに塗ったMODEMOのスハ32W。)
ボディーはプライマーを厚めに塗ったので、かなり黄色くなっています。
ここで仕上がりを確認してみると・・・


側板表面を拡大。
側板の塗膜表面になにやら跡が!
どうやらプライマーの乾燥が不十分だったようで、わずかに表面にマスキングテープの跡が付いたようでした。
当日は気温が低めだったのが原因のようです。
しかし触ってみたところ、段差などは付いていないようだったので、そのまま塗装を進めることにしました。


貫通扉を接着。
この段階で妻面に貫通扉を接着しておきます。
用いた接着剤は黄色いゴム系です。

次は床板・台車枠・幌枠・ベンチレーター・テールライトカバーにつや消し黒(クレオス【33】つや消しブラック)を吹き付けます。


塗装が終わった床板他のパーツ。
その他、室内仕切はボディー室内と同時、イス板は屋根と同時に同色を塗っています。

それからボディーは屋根と室内をマスキングして、側妻面をぶどう色2号に塗ります。
塗料はGM製が第一に思い浮かぶと思いますが、イメージよりくすんだ感じでいまいち気に入らなかったので、調色したものを用いました。
調色はその場で様子を見ながら調整した結果、クレオス【131】赤褐色とGM【2】ぶどう色2号にクレオス【3】レッドを少々加えたものが良い感じになったので、それを吹き付けています。

塗装は順調に進みましたが、この日は後に用事があったため、7割方塗ったところで時間切れとなってしまいました。


7割方塗装が進んだボディーをKATOのオハ47と比較。
帰ってから塗り途中のボディーを見てみると、思ったより明るめになったように思えました。
あまり明るいとオモチャっぽい感じになってしまうので、これに塗り重ねる色はもう少し暗めに調色しなおすことにしました。


日を改めて再塗装、今度は調色から行います。

最初に塗った色はGMぶどう色2号を入れ過ぎたようだったので、今度はクレオスの【131】赤褐色に【29】艦底色を加えて彩度を上げたところへ、クレオス【33】つや消しブラックを加えて彩度をちょっと落とし、さらに仕上げとしてGM【2】ぶどう色2号をちょびっと入れ、明るさを調整してみました。

塗装後は実に深みのある綺麗な色に仕上がり、心配していたプライマーの艶ムラも気にならないレベルに落ち着きました。
そしてニヤニヤしながら後片づけしたあとしばし休憩タイムを挟み、3時間ほどしてから塗り上がったボディーを見てみると・・・黒いのです。
乾燥が進んだ結果、色味が濃くなったようでした。

これ以上塗るとボッテリしそうだったのと、それよりもう塗り直す気力が残っていなかったため(^^;)、やや不本意ながらこれでガマンすることにしました。
本当にこだわる方なら剥がして塗り直すのでしょうけれど・・・。


続いてはレタリングです。
市販のインレタを用い、ボディー各部に表記を入れていきます。


妻板に検査表記を転写しているところ。
車掌室側の妻面では検査表記が手すりに分断されますので、インレタを細かくカットして転写しました。
なおこれを止めるのに用いるセロハンテープは、事前に何度かベタベタ触って粘着力を落としてから使っています。


インレタ転写が済んだ3両。
用いたインレタは、車番と荷物・郵便表記がGMのNo6311 客車(郵便・荷物車)、他はくろま屋の郵便車用Aなどです。
(現在はレボリューションファクトリー他から各種出ています。)
それにしてもこのスユニ60・61は表記が多くて大変でした。郵便表記は何度も失敗して2種のインレタが混じっています(笑)。
ちなみに車番と所属はそれぞれ
 1両目:スユニ60 2037(仙コリ)
 2両目:スユニ61 2017(仙コリ)
 3両目:スユニ60 2011(仙フク)
としています。

転写が済んだら半艶に調整したクリアーを吹き付けて、レタリングを保護しておきました。
その後は各部に色差しします。


色差しが済んだスユニ60の車掌室付近。
HゴムにGM【9】ねずみ1号、扉の取っ手にクレオス【9】ゴールド、デッキ扉下の踏み板にクレオス【33】つや消しブラックを面相筆で塗りました。


幌枠とテールライトカバー。
小パーツにも色入れします。
幌枠の布部分にGM【35】ダークグレー、テールライトカバーのLED部分に屋根と同色を塗ります。


テールレンズ。
φ1.0の光学繊維から作ったテールライトレンズにはクレオス【47】クリアーレッドを筆差し。


台車集電板。
台車集電板は、プレス抜きのカエリをペーパーで落として洗浄したあと、プライマー>つや消しブラックと塗りました。


最後にウェザリングです。
一般的にはこれも吹き付けにて行う場合が多いのですが、ここではパステル粉を筆でこすりつけてお茶を濁します。
当然触れると落ちてしまいますが、つや消し塗装の上なら少し残りますので・・・(^^;)


粉にしたパステルと、こすりつけるのに用いる筆。
用いたのはいわゆるハードパステルで画材店で入手したものです。
黒の他、茶系統の色を複数用意し、カッターを立てて削った粉を使い古しの傷んだ筆で床板と台車枠にこすりつけていきます。


ウェザリング前後の床板。上が作業後。
床板はホコリっぽい色に調整したものをすりつけました。
画像はスユニ60のものですが、魚腹台枠の仕上がり具合はこのような感じです。


こちらは台車枠、下が作業後。
台車枠は、軸受周辺にサビを模した赤っぽい色を、全体には床板と同じホコリっぽい色を付けてみましたが、自己満足の世界ですね・・・。

以上で塗装関係の作業は完了となります。

16.組み立て

いよいよ最後の組み立て作業に入ります。
まずは下回りから。


床上通電板を付け、室内灯への通電シューを曲げているところ。
床上にまず作っておいた床上集電板を瞬間接着剤で接着し、端部の室内灯への通電シューを現物合わせで曲げて、余分をカットしておきます。
このときテールユニットとショートしないよう、紙シール(ビデオテープのラベルより)を貼って絶縁しておきました。(矢印)


テールスイッチ、基板、カバーと取り付けているところ。
それからテールライトスイッチを組み付けて、テール基板をビス止めし、テールカバーを両面テープで取り付けます。


組み立てたイス板。上がスユニ61、下はスユニ60のものです。
室内装置も透明タイプのゴム系接着剤で組み立てました。
郵便区分室の丸イスは、φ2程度のランナーを輪切りにしたものです。


続いて上回りに取り掛かりまして、こちらは最初に窓ガラスを接着していきます。


用意したPET板。
透明のものとトイレの白色のものは、t0.2のPET板から切り出して用いることにしました。


ガラスを貼り付けたボディーと、用いた材料(上)。
洗面所の擦りガラスは、透明のPET板の裏側を#1000のペーパーで傷付けて使用。
いっぽう保護棒がある部分には、最近この表現が細く改良されたGMキット付属の印刷済みのもの(おそらく塩ビ製)を用いました。
いずれも透明タイプのゴム系接着剤で接着しています。

また、貼り付けの際は切断線の直角や棒の位置にも気を遣っています。これは室内灯を入れると、この辺りの乱れが目立って見苦しいためです。
内板の丸穴もパテ埋めしておけば良かったのですが・・・(^^;)


テールレンズ取付中。
それからテールライトレンズは透明ゴム系接着剤で内側から接着。固着後に後端をニッパーとナイフでツライチにカットしておきます。


室内灯の端を“延長”したところ。
室内灯ユニットには、端部にKATO室内灯導光板の切れ端をエポキシ接着剤で接着。これはそのままだと短くて車端の車掌室が暗くなってしまうためです。


屋根裏に室内灯の台を付けたボディーと、両面テープを貼った室内灯。
これを、屋根裏に接着したt0.5プラ板へ、両面テープで取り付けました。
本当はビス止めした方が確実です。


ボディーに付けた室内灯の、通電板付近。
通電板は画像のように、郵便室側の妻板裏側にぴったり沿う形になります。ここへ床板の通電シューが接触するわけです。


ベンチレーター接着中。
それからベンチレーターは透明ゴム系でイモ付けします。
この際はまず両端を付け、画像のようにプラ板の“定規”を用いて中間、その中間・・・と付けていくと、一直線に付けられます。



イス板を付ける前後の下回りと、上回り。
そして床板にイス板をこれまた両面テープで付けて下回りを完成させ、ボディーに組み込めば組み立て完了となります。
なおこのとき、下回りがきつくて入らなかったため、テールライトカバーを少しヤスって黒を塗り直してから再度組み合わせています。塗膜の分の余裕を見ておけば、そんな事態は防げたと思います(^^;ゞ)。



完成した3両を上から。
手前から、スユニ60後期(1両目)、スユニ61(2両目)、スユニ60前期(3両目)です。


スユニ60 0番台後期形(1両目)
レイルロードのコンバージョンキットで、これのみ組み直しです。
車掌室側妻面の手すりが抜けなくて手直しが中途半端になってしまった点が心残りですが、手を掛けた分、当初より愛着が増しました(笑)。


スユニ61(2両目)
これもレイルロードの側板キット。ただし荷物扉はイエロートレイン製に交換しています。
台枠を直さなかったのと、台車中心間を連結面間隔優先でスケールより短くしたので若干イメージが違って見えるかもしれません。


スユニ60前期形(3両目)
これのみレボリューションファクトリー製ですが、こちらも荷物扉をイエロートレインのパーツに換えてあります。
上の2両より側板裾が短めのためかやや軽快な印象ですが、魚腹台枠なので腰高な感じはしないようです。


各車の妻面。左から、スユニ60後期(1両目)、スユニ61(2両目)、スユニ60前期(3両目)。
上が車掌室側、下が郵便室側です。
妻面は基本的に共通ですが、貫通扉と端梁に差異があります。
なお、右下のスユニ60の扉窓に付く保護棒は、本来3本ではなく4本のようです。(^^;)


妻面付近。こちらも左から、スユニ60後期(1両目)、スユニ61(2両目)、スユニ60前期(3両目)。
床下端部には端梁やジャンパ栓等を付け、細密感を上げています。でもコの字のステップは省略・・・アンバランスでしょうか(汗)。


暗くして通電したところ。スユニ60前期(3両目)です。
室内は画像のような感じに見えます。
区分室はちらっと見える程度ですが、郵袋や郵便職員を乗せたら面白いかも?


磐越西線のイメージで。スユニ60後期(1両目)です。
全体的な印象は、窓枠が薄く、ガラスが平板を裏貼りしたものなので、窓まわりがはめ込み窓のプラ製品とは違ってスッキリした感じになりました。ツヤが強めになった塗装も相まって、そこはかとない“高級感”が漂っているようにも思えます(笑)。

このような旧形車の木製窓枠は、はめ込みガラスより裏貼りの方が向いているように作者は思います。窓枠の厚みを0.3mm程度に押さえれば、新規のプラキットでも裏貼り式で良いのではないでしょうか。無理にはめ込みにして金型代がかさんだあげく、平面性が悪くて隙間の大きいガラスをはめ込むよりは・・・。(^^;)
現にGMキットでもオハ61あたりは窓枠が薄いため、窓周りがすっきりして見えます。


完成したモデルは、雑多な車種で構成したローカル編成の端に連結して運転を楽しんでいます。
例えば以下のような編成。
ED77+スハフ32+スハ42+オハ35+オハ61+スユニ60(磐越西線)
EF71+マニ36+スユニ61+オハフ61+スハ32+ナハ11+オハフ33(奥羽線)
この辺は模型的に手頃な長さで、形態的にも変化が付いて面白いです。

実車についてですが、東北では主に亜幹線で4〜10連の普通列車に併結されて活躍したようです。
スユニ60は郡山・福島・尾久配置車が磐越西線・奥羽本線・常磐線で、スユニ61は郡山・福島・仙台・尾久・新津車が磐越西・奥羽・仙山・常磐・羽越線でそれぞれ運用されていた記録が残っています。

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