エッチング側板コンバージョンキットを組む

6.

6.床板の加工

ここからは下回りの工作です。
主に車高下げおよび集電化の工作と、台枠の加工を行います。
ここでは3両目のスユニ60前期形を中心に説明します。


未加工の床板(上)と、切り欠きを埋めて台枠を削った床板(下)。
GMキットの床板を切り出し、まず周囲の切り欠きをt1.0プラ板で埋めます。
それから台枠を表現したモールドの大部分、台車付近以外を平刀とペーパーで削って平滑にしてしまいます(画像下)。

これは実車が魚腹台枠になっていて、モールドの形態(オハ35タイプ)とは大きく異なっているためです。
新しい台枠はプラ板で新製します。


鋼体化客車で魚腹台枠を用いているのは、スユニ60全車のほか、マニ60 200・240・300・350番台です。なお、それらの魚腹台枠にも2種類あり、スユニ60 300とマニ60 300番台は特殊魚腹と呼ばれるタイプ(UF220)になっていて、他のタイプ(UF219)とは形態が異なっているということです。


つづいて台車中心間隔を詰めるため、台車付近を一旦レザーソーでカットして1mmほど詰めます。


切り口を仕上げ、V字の溝を入れたところ。
カットしたらヤスリで所定の寸法に仕上げます。
さらに角ヤスリで接合面にV字の溝を入れます。これは接着剤が確実に行き渡るようにするためです。


接合後。
そしてズレや折れが無いよう慎重に面を合わせて、瞬間接着剤で接着します。
固着したら先ほどの溝にさらに接着剤を流しておきました。


次に集電のためのスリットを開けます。
台車はKATO製を用い、KATOの完成品と同様の方式で集電するようにします。


集電用スリットの位置をコンパスで罫書いたところ。
まずコンパスでスリット位置を罫書きますが、この際は画像のように仮にプラ材で作った「芯」を床板の穴にはめこんでいます。


画像上から下の順に加工。
それからニードルで7つずつマークしたのち、φ0.8のドリルで連続して孔を開け、刃先30度のナイフで仕上げます。


台車を付けてみたところ。
出来たら台車を付けて首振りを確認しておきました。


スリットの寸法は図の通りです。

この床板にKATOの台車(マニ60用TR11)を組み合わせると、中心ピンのガタが大きくやや不安定になるので、その対策をします。


t0.2板で自作したプラワッシャー(上)と、それを穴にはめてみたところ(下)。
床板の台車穴上面にt0.2プラ材から作ったワッシャーを接着し、ガタを小さくします。
ワッシャーはまず外形をコンパスでケガいてから中央にやや小さめの孔を開け、そのあと外形を切り出して作りました。
なお、床板の穴の形にばらつきがあったため、やや大きめに切り出して現物合わせでヤスって合わせています。中心の孔も接着後に丸ヤスリで仕上げました。



上面のリブを削っているところ。
前後しますが、床板上面のリブは室内床の邪魔になるので、平刀で削って低くしておきます。
この際は画像のように、脇に仕上がり寸法の厚さの板(t1.0)を添えて行うと簡単です。
なお、枕木方向のリブは残さず削ってしまいました。


端部に“端梁ベース板”を付けた状態。
床板端部は0.3mm短くなるようボディーと合わせてヤスリで調整したあと、t0.3プラ板を1.5mmほど下に出るように貼り付けました。
こうするとボディー裾より下へ顔を出しますが、そこへ端梁となるプラ板を貼り付けることで、床板側に端梁が付く構造にするわけです。
端梁やジャンパ栓などを床板側に付ければ、分解時も破損しにくくなりますし、塗装の際もマスキングが不要になるなど、何かとメリットが多いです。


ここまで出来たら、ボディーに床板止めを付けます。
元々キットにも折り曲げ式のツメがありますが、車高を下げるため床板の位置を変えるので、キットのツメは折り曲げずにいました。


プラ帯の床板止めを取り付けているところ。
新しい床板止めは、t0.3プラ板から切り出したものを接着して形成しました。
※完成後、t0.3ではやはり薄すぎて止まらない場合があったので、一部t0.5板で作り直しています。
接着時の位置合わせでは画像のようにノギスの深さ測定部を利用し、簡潔に進めました。

取り付け高さは、裾から1.25mmのところです。なお、1・2両目のレイルロード車は側板裾が低めだったので裾から1.5mmにしました。
この値はKATOのマニ60と雨樋が揃うように、レール上で比較して決めたものです。

また、床板の抜け止め用のツメとして、t0.2の帯板を裾付近に接着しました。
そしてこれに対応する切り欠きを、床板側に付けておきます。


サイドを切り欠いたところへt0.5板を接着したところ。
まず床板の該当部を切り欠き、その部分に上面を揃えてt0.5板を接着。
固着後にサイドを揃えて凹みを作ります。


側板裾に付けた“床板抜け止めツメ”と、床板に付けた切り欠き。
そこへ側板裾のツメがはまるようにしたわけです。
なお、床板がこれより少し深くなるレイルロード車は、床板側の切り欠きを省略して、床板下面に引っ掛かるようにしています。


以上でボディーと床板の基本構造は出来上がりました。
続いて台枠を表現します。
魚腹台枠で特徴的な中梁は、t0.5板から作ります。


製作中の中梁。
まず広めの帯板に罫書いてから、斜めの部分を切り欠き(画像上)。
それから全体を切り出しました(画像下)。

これを床板に接着するわけですが、ここで一計を案じました。
イモ付けでは強度が出ないような気がしたので、周囲にプラ板を貼り付けて中梁の付け根をがっちり覆うようにしたのです。


中梁接着時の様子。
取り付けは画像の順で行いました。
まず2枚の中梁の中央にt0.3の帯板を貼り付け、それに接するように中梁を立てます。(画像上)
なお、中梁の端の部分は車輪に干渉したためカットしてあります。
それから中央部のt0.3板を前後に貼り足して、ボルスターまで延長。(画像中)
そして両サイドにもt0.3板を貼って床板下面を整えました。(画像下)
この際、さきほどの床板抜け止めの部分はあらかじめ切り欠いておき、また台車付近にはシルエットを整えるため、中心線上に帯板を立てて中梁端部に見立てています。


中梁の寸法は図の通りです。
※この寸法は写真から割り出したものです。スケール通りとは限りませんので、参考にされる際はその点ご了承の上でお願い致します。m(_ _)m



ボディーと合わせて様子を見ているところ。
ボディーにはめ込んで具合を確かめます。
ちょうど良い感じになったようです。



横梁取付中。
続けて横梁を付けていきます。
材料は同じt0.5板で、中梁の太さが変わる点と側板裾を結ぶように形成して、イモ付け接着します。


魚腹台枠が仕上がったスユニ60の床板。
上が1両目(スユニ60後期)、下が3両目(スユニ60前期)です。
車端側の細い方は、帯板を接着してから下端をヤスリで削って斜めにしています。
これで魚腹台枠の表現は完了です。
また、画像上は1両目のレイルロード車で、側板裾が低いので貼り付けるプラ板をt0.5にして下面を裾と揃えています。
両端が黒いのは、組み直し前の塗装を落とさなかったためです。(^^;)



以上でスユニ60の床板は基本部分が完成しました。
ここから下はレイルロード車のスユニ61(2両目)について少し解説しておきます。

スユニ61は魚腹台枠ではありませんが、鋼体化客車独特の台枠が用いられており、キットの35系タイプとは少し異なっています(横梁が先細りではなくストレート、ただし端部の角は45度に落としてある)。しかし、横から見る分にはそれほど違いは目立たないと判断して、キットの梁を生かすことにしました。
ところが車高を下げるために床板全体を沈めてしまうと、中梁が横から見えなくなってしまうのが気に入りませんでした。
そこで床板の中央部分のみ一旦切り離し、下にずらして再接合することで、横から梁が見えるようにすることにしました。


段を付けて再接合したスユニ61の床板。
具体的には台車付近をレザーソーでカットして、中央側の接合部上面にt0.5板を貼ります。そして上面を揃えて再接着し、0.5mm中央部が下がるようにしました。


横から。
画像のように、台車付近だけ一段上がる形態になります。


下面のようす。
下面には同じくt0.5板を接着しました。補強と段差隠しを兼ねたものです。
また中心線上に帯板を立てて、横から見たとき中梁の途切れた部分が目立たないようにしました。


側板裾に付けた床板止めと、抜け止めのツメ。
ボディーの床板止めと抜け止めは画像のように付けました。


床板をはめた状態。
抜け止めのツメは画像のように、床板の一段高い部分へはまるように合わせています。


全体像。
これでスユニ61も基本部分は加工完了です。

このスユニ61を始め、本来魚腹台枠車以外の鋼体化客車は台車中心間隔がオハ35やスハ43等より広く、かつ車体の長さが短いため、台車位置がスハ43より外側に寄って見えます。
ここでは台車位置の再現よりも、台車カプラーをそのまま生かすことと連結面間隔を狭くすることを優先したため、結果的に台車位置はスケールより内寄りとなっています。



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