撮影用ジオラマ製作記

その1.ベース製作〜レール固定

(1)ベース製作


ベース(表)。

ベース(裏)。
ベースは一般的な構成で、ベニヤ合板(4mm厚)に、枠(6×8mm檜角棒)を打ち付けて製作しました。
サイズは、収納する予定の入れ物(菓子箱)に合わせて280×250mmに決定。正方形に近い形です。
ベニヤ板のカットは普通のカッターで行い、両面から半分ずつ切り込みを入れて切断。また、枠は上記の角棒をレザーソーで切断し、木工用ボンドと小釘を併用して接合しました。

ベースのカド部分(表)。

ベースのカド部分(裏)。
ちなみに、角材の端部は45度突き合わせとしてみましたが、のちに塗装してしまうのであまり意味が無かったかもしれません(^^;)。

(2)ケガキ

続いてベースにレール位置や道路、川、農地などをケガきます。

配置パターンの落書き(^^;)。
あらかじめ、紙に大まかな配置パターン(落書き程度の簡単なもの)をいくつか描いておき、その中からイメージに合ったものを選んで、それを元にケガキ作業を行いました。

ここで、風景を作る上で重要になってくる、時代や季節、地域の設定について少々説明します。
時代と地域は、手持ちの車両(旧客や国鉄色の交直流電車など)に似合いそうな1980年頃の南東北とし、架線柱を取り外し式にして電化・非電化の両方を再現出来るようにしました。イメージとしては磐越西線や奥羽線あたりです。
季節は初秋(稲刈り時期)に決めました。これは稲刈りの済んだ部分(刈田)を一度作ってみたかったためです。加えて、稲を刈入れる前の田も作り、「実りの秋」を強調することに。また畑には、稲刈り時期に合った適当な作物を植えます。


このジオラマの配置を簡単に説明しておきます。

まずレールですが、今回はベースの対角線に沿うような方向に配置しました。これは、車両を置いて撮影する際、アングルの自由度が増すためです。
また、前述のようにレールはカーブさせましたが、曲線半径は使用する予定のフレキシブル線路(KATO)をベース上で実際に曲げながら検討した結果、Nゲージとしてはかなり緩めの約600mmになりました。

レールはベース面に直接固定せず、ベースより15mmほど高くして大部分を築堤としました。こうすると、乗せた車両が引き立つばかりでなく、枕木より低い部分(川面など)もベースを掘らずに表現出来ます。加えて、撮影時にカメラを低く構えたときでも、画面下にベース端を写りにくくする効果もあります。
またレールの両端部は、手持ちの道床付きレール(TOMIX)と接続可能にします。

レール以外では、道路(舗装・未舗装)、水路を設けます。このうち舗装路と水路は、単調なレール周りにアクセントを付けるためレールと交わらせ、交差部分をそれぞれ踏切、鉄橋(デッキガーダー)として仕上げることにしました。そのほかの部分は基本的に農地(田畑)です。


実際のケガキ作業は、レール中心線から始めました。
鉛筆を用い、中心線を描き入れたら、それと平行に道床端のラインを入れます。道床幅はKATOのコルク道床に合わせて34mmとしました。

続いて道路や水路の位置をケガきます。
位置は踏切と鉄橋の部分を先に決め、あとはそれと自然につながるよう、フリーハンドでラインを決めたのち、幅がスケールに合っているかどうかに注意しながら描き込んでいきます。
今回は舗装道路を幅22mm(実物換算約3.3m)、未舗装路を15mm(2.2m)、水路を20mm(3m)くらいにしてみました。

その後、農地等の区画も描き入れますが、単調な景色にならないよう、区画の大きさにメリハリを付けたり、隣接する道路や線路に合わせて高低差を付けたりします。
このあたりは実物を参考に、極力不自然にならないよう注意しながら進めていきました。

(3)道床・道路・田畑などの芯材貼付け

線路・築堤・道路・農地などの芯となる材料を貼り付けます。


芯材貼り付け中。
材料は、主に発泡スチロールと段ボールです。これらは一応店で売られていますが、作者はいつも家庭から出る余剰品(つまりゴミ)から調達しています。
なお、段ボールと道床用の発泡スチロールは、なるべく固めの物を選びました。

はじめは道床から作りました。今回は線路を築堤とするため、14mm厚(実測)の発泡スチロールを使用。この上にフレキシブル線路を直接接着する予定です。今回たまたま材料の長さが足りなかったため、中央付近で継いであります。
なお、曲線を切る際はカッターの刃を長く出し、刃の“しなり”を利用しました。

図1 切れたら、道床のバラスト肩部分を表現するためカドを斜めにカット(図1)してから、木工用ボンドでベースに接着しました。
なお、水路と交わる部分(デッキガーダー橋を架ける所)は、接着前に切除しておきました。

道床をカット、線路と共に仮置きしたところ。

次に、踏切付近の道路の芯材を、道床と同じ材料から切り出し、接着します。
続いて築堤の土手部分(斜面)を作りますが、これには発泡スチロールを三角柱状にカットしたものを用い、先ほど接着した道床の脇に付けていきます。カーブした道床になじませるため、三角柱は適当にコマ切れにしてから接着しました。

それから未舗装の道路(農道)を、同じく発泡スチロールで作ります。こちらは勾配があるため、築堤部分も一体にして、現物合わせで削りながら作りました。


農地の芯材を貼り付け中。

同じく。

そのあと、農地(田畑)の芯材として段ボールを貼りますが、場所によって重ねる枚数を変えて、高さの違いを表現します。一部(ベース端面に出る部分など)には、発泡スチロールやバルサ板を用い、段ボールの断面が見えないようにしてみました。
なお、のちに刈り入れ前の稲を表現する部分(人工芝を貼る)には、芯材は貼りません。人工芝の基面に厚みがあるため、少し高くなるからです。

(4)鉄橋(デッキガーダー橋)製作

水路に架かる橋を作ります。かなり小さめ(桁長17mm)のデッキガーダー橋です。

始めに、橋台部分のうち、路盤中央部の壁面をプラシート(t1.0)から現物合わせで切り出し、路盤端面に仮置きしました。
次に、ガーダー(橋桁)の主桁(橋台間にまたがる、大きな板)を2枚、プラシート(t0.5・t0.3)で作ります。そしてレール・枕木(バルサ材より)を仮に置いてみて、桁の台(t1.0プラシートより)の高さを調整しながら各部の寸法を決めていきました。

桁の台部分の寸法を見ているところ。

枕木・レールを置いてみたところ。

上から。水路は直角ではなく、少し斜めに交わる。

あとは、橋台各部材の厚み方向にプラシートの帯板を付け、それらしく仕上げてあります。
ガーダーは、2枚の主桁を結ぶように帯板を付け、さらに斜めに補強材を入れて組み立てました。

ガーダー(塗装後)。

組立てが済み、仮設置してみた橋台・ガーダー。
水面(次項で説明)も仮に置いてある。

なお、実物の構造を詳しく知りたい方は、資料1をご覧下さい。
ちなみに、作例の主桁は長さに対してちょっと太すぎのようです。2/3くらいにするとよりリアルになると思います。

それから、各パーツを塗装し、ウェザリングを施しておきました。
※この時点ではまだ接着していません。

(5)水面の表現

橋台に続いて、水面を作ります。
水面の表現には、透明レジンやパラフィン等を流すのが一般的かと思いますが、今回は小さな水路なので、透明プラシートと木工用ボンドで十分です。

まず、透明プラシートを用意しますが、今回はt0.4くらいの透明塩ビ板(包装材より)を使いました。それを水面の形に切り抜きます。このときはあらかじめ型紙を作っておき、それに合わせて塩ビ板をカットしました。

切り抜いたら、裏面を水の色に塗装します。今回はエナメル系塗料で青緑に塗りました。
(もう少し赤を混ぜた方が実感的かもしれません)
続いて表面に木工用ボンドの原液を薄く塗り、古歯ブラシで軽くたたいて「波」を表現しました。このときは、気泡が入らないように注意します。

ホコリが被らないようにして完全に乾かしたら、べース面に木工用ボンドで接着します。作例ではベースの木目が少し透けて見えてしまったため、接着前にベースの水面部分を黒く塗っておきました。

水面。

水面を付けたら、ガーダー橋の橋台部分を築堤に接着します。
そのあと水面に沿って発泡スチロールで土手を築き、田畑の周囲(あぜ)なども作っておきました。

水面・土手取り付け後(レール・橋桁は仮置き)。

同じく水面・土手取り付け後。

(6)レール加工・固定

レールの加工に移ります。

今回はフレキシブルを使うので、まず道床に合わせて曲げ癖を付けておきます。また、ガーダー橋部分は自作の枕木を別付けする予定なので、プラの枕木はその分だけ間隔を空け、余分な所はカットしておきました。

ここで枕木を塗装します。
実物をよく観察して色合いを決めたのち、プラ用ラッカー(Mr.カラー)を調色し、一本一本筆塗りしていきました。

続いて、レールに給電用の端子(t0.1燐青銅板)をハンダ付けしました。

給電用端子。
レールの裏面に、L型に曲げた帯板を付け、道床・ベースに穴を開けて下面へ通し、下からフィーダーコードを接続出来るようにするわけです。
(レール端部にはジョイナーを付けますので、この給電用端子は不要のように思われるかも知れませんが、万一のジョイナー接触不良に備えて、また、ジオラマ単独での給電も可能にするために行いました。)

そのあと、レールを道床にあてがいながら最終的なレール長を決定し、ニッパーでカットしてヤスリで仕上げておきます。それからジョイナーはTOMIXの旧レールから取り(ファイントラック用はKATOのレールに合いませんでした)、固めに締めたのち、押し込みます。



図2 レールを接着する前に、発泡スチロールの道床にカントを付けます。
ボール紙(t0.4くらい)を約7mm幅の円弧状に切り、木工用ボンドで接着しました。(図2)
なお、カントは控えめにしたつもりでしたが、実際にレール・車両を乗せてみると、ややきつく感じられました。

それからレール端部の道床を、接続する道床付き線路(TOMIX)に合わせて少し切り欠き、レールを接着します。
接着は、これまた木工用ボンドの点付けで行い(ゴム系は発泡スチロールの道床が溶けるため使えません)、要所に小釘を打って固定しました。固着したら、小釘は抜き取っておきます。

レール仮止め中。(架線柱台接着済み)

こちらは橋部分。桁・枕木はまだ付けない。
(一部地表表現済み)

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